「思いやり」とは何か

どういう事だろう。

歩いていると良く考える。

「日本人はお人好しだ」

と言われることが多い。

「おもてなしの精神」

と呼ばれるここ日本。

でも別にそんなことはないんじゃないかって思う。

いつも歩いていると思う。

電車に乗ってると思う。

自分の中の肌感では、7割ぐらいが普通の人で3割が上記の心を持っている人に過ぎない気がする。

日本人って別に優しいわけじゃないんよきっと。

周りを気にする、自分がどう見られるかってのを気にするタイプが多いだけで。

例えば会社の上司とか後輩とか、仲良い友達とか…

そういう既に自分と関係性がある人たちで考えるとこの実態は分かりにくい。

なぜなら関係性が成立しているので、その関係性に沿って私たちは接するから。

会社の上司や後輩で言えば利害関係。

友達で言えば長年付き合ってきた中で沸く情。

「こんな態度したら会社からの評価が落ちる」

「上司に嫌われたら会社に居づらくなる」

「親友だから優しくするのは当たり前」

「この友達にはいつも良くしてもらっているから自分も何か返さなければ」

そういった考えのもとで人間は行動しているのだとすれば、相互関係の中では人間の「素」の姿を見るのは難しい。

つまり誰かと一緒にいるときや、何かしらの組織に属している状態では、その人の本性はなかなか現れにくいということである。

よって人間の1番本性が現れやすい時はいつなのかと考えると、、

1人でいる時！（当たり前）

単純な考えだけどやっぱりここに行き着いた。

1人で歩いている時、電車に乗っている時、買い物をしているとき、ご飯を食べている時など…

誰かの「1人でいる時」に大変遭遇しやすいのが自分の住む東京。

だからなのか自分は「日本人が思いやりのある人種」だとはあまり思えない。

1人行動している時の人間は、かなり自分本位な行動をしているからだ。

それは自分も含めてそうだと思う。

例えば仕事に向かう時、遅刻寸前で急いで電車から降りて改札までを猛ダッシュするやつがいる。通勤時間はかなりそういった輩が多く、自分もそれで足を踏まれたりぶつかったりしたことが何度かある。

自分も朝時間がない時は少々早歩きになって、前に歩く人たちを無理やり退けようとしたことが何度かある。

それは自分でもわかっている。数分でも早く次の電車に乗って、会社に遅刻しないためだ。

しかしそれをやっている時の精神状態はかなりストレスがかかっている。

人を無理やり追い越そうとする体力だったり、前を歩く人に向けたイライラだったり。間に合うように行動しないことで自分勝手に振る舞う自分に対する怒りだったり。

だからそういうのは極力避けるようにしようとした。

そもそもあの東京特有の通勤ラッシュの時間がすごく嫌いだ。参勤交代みたく一列にゾロっと並んでみんなで早歩きして、それに合わせて混ざり歩く自分がめちゃくちゃ気持ち悪く感じる。

かなりストレスだったので、なるべく電車通勤しなくてすむような環境に変えた。

すると精神状態は向上し朝の通勤が楽になった。

周り（自分勝手に行動する輩）を見てイライラすることもなく、たとえ余裕のない行動をしてしまっても、人に迷惑をかけることが少なくなったからだ。

朝の通勤時間は、日本人の生真面目さがゆえに自分勝手になる行動がかなり顕著に現れていると思う。

「日本人」という括りにすると人種は関係ないだとか批判がくるかもしれないけど。

少なくともこの現象は日本特有なんじゃないかと思う。

時間にルーズな国なら、周りの人を退けてまで仕事に間に合うように行動しないと思う。

あと、1人行動してて思うのが、歩いてるときにアンガールズ現象になることがあまりないということだ。

わたしはかなり人目を気にする人間で、1人で歩いている時に反対から人間がくると、それだけに一点集中してしまう。

自分が歩いているのが右側で、一方は左側だったとして、それが変わらなければ数秒後にはぶつかるということが予想できる。

そこでいつも自分は相手が自分と同じ車線で歩いているのに気づき、逆側に移動するのだが…

歩いてばかりの東京だと、これを自分がやってばかりだなぁ思って少しやるせない気持ちになることがある。

でもそれは自分が相手を気にしすぎる性格だからであって、普通の人はそこまでいちいち気に留めない。

だから決して自分が「思いやりのある人間」だとは思わない。けれど、ここ数年間街を歩いてきて感じたのは、自分よりも先に気づいて横にずれてくれる人間はなかなかいないということだった。

だからアンガールズ現象になることなんて滅多にないから、なったときは少し嬉しい。

思いやりのぶつかり合い。

※アンガールズ現象＝双方とも横にずれた結果同じ位置になってぶつかりそうになる現象。昔アンガールズが知らない人とこの場面になって気まずくなるというショートコントをよく披露してた。

これはあくまでも自分の経験してきた一部で主観に過ぎない。もし自分の見た目が超怖くてガタイのいいヤクザみたいな男だったら、皆んな躊躇せず道を開けるだろうけれど…。

結局、人は利己的な生き物だということだ。

自分に害があると考えて道を開ける行動は思いやりでもなんでもない。

善意とは何か、思いやりとは何か。

正解はないし、それぞれに考えはあるのだろうから、自分のやってることが全て正しいとは思わない。

けれど、私はなるべく自分にストレス、負荷をかけたくないと思っている。

自分があえて退かずにぶつかりかけてトラブルになるのは嫌だし、先に相手が退いていたら、結局自分は「申し訳ない」という気持ちになるはずだ。

たとえ道を開けるのが毎回自分であっても、上記のストレスに比べたらそこまで苦じゃないのかもしれない、と思うようにして自分を納得させている。

結局この考えも見方によっては「利己的」に過ぎない。自分の精神状態が1番だと考えて行動しているから。

大きく言えば人間が、自分主義で利己的に生きるのなんて当たり前である。

そうしなければ生きていけない。

そうしてこなかった人たちがこの世からいなくなっていることだってあるだろう。

自分も利己的に生きていることは間違いない。

しかし、結果としてそれが相手を傷つける、相手を不快にさせる行動をしているならば、考えを改めるべきだろう。

自分のする利己的な行動が、結果的に相手に危害を加えないものなのであれば、それが1番理想である。

「思いやり」なんてものは自分の中にも存在しないのかもしれないが、そうやって自己満足でもいいから、少しでも相手にとってプラスになるようなことをしていきたい。

しつこく言うがそれは善意でもなんでもなく、ただの自己満足にすぎないのだが。

自分が気持ちよく生きるためにも、そうしていく必要があると考えている。

1人行動しているときの人間を見つめて、自分の行動を見つめ直す。

みんなそれぞれの人生を生きていて、相手を思いやる心なんて常に持ち合わせているわけではない。

でも自分は、3割の可能性を信じている。

3割の人間は、そういう気持ちで生きているのだと。

そして自分もまた、3割の人間になれるような行動が少しでもできたらと。

今日も自分は道を開けて歩く。